SBDって何?‎ > ‎

科学・技術教育としてのソープボックスダービー

新しいエコ時代の科学・技術教育に寄与

レース・技術委員会
NSBD正会員 山本 君一
同 佐藤 博道

 「ソープボックスダービー®で子どもを育てる!」・・・私たちはこの思いを持ち続けて13年、活動をしてきました。そして「親と子のコミュニケーションの場を作る」ことには成功できたと思います。しかし、レースに勝てません。
ソープボックスダービー®は、重力(ポテンシャルエネルギー)だけを動力とするカー
レースであり、使用する競技用車両(SBDカー)(注) は既定のキット、調整できるのはボルトの締め付け力や操舵バランスなどごくわずか・・・。そうした制約が多い中、大きな差など出るはずのないレースで、日本はいつも予選で敗退してきました。世界有数の自動車産業国が一度もアメリカに勝てずにいるのです。
 (注) ソープボックスダービー®の公式レース車両のことで、子どもが大人の援助を得て組み上げられる程度の難度を持つキットカー

「なぜ?」私たちは考えました。そこで分かってきたのは、「子どもたちには物理法則を身体で理解する感性が足りない」ということでした。
重力、重さ、摩擦、抵抗、などについて、日本の子どもはテストでは良い点数を取ります。しかし、「身体で分かっている」わけではないのです。つまり、物理現象を理解した上で、車両作製、コース取り、運転操作への応用ができていないのです。

国際大会では、アメリカ人親子が各々工具を持って微調整に集中し、コース取りについて熱く議論している姿を見ます。この熱意の差がある限り、日本から世界チャンピオンを出すことは難しいでしょう。私たち大人は、机に向かうことだけが勉強だと思い込み、ケガを恐れて工具を取り上げてこなかったでしょうか。理科離れの原因とその弊害がここにも現れているのです。

ある中学生の話。彼は夏休みの宿題で、「実験し、工作し、レポートにまとめる」という課題に手を付けることさえできませんでした。しかし、ポイントを指導すると、やがて考える楽しさ、工夫する楽しさに気づきました。そして自分の手を動かして実験することで理解が深まり、納得のいくレポートを作成できたそうです。日本の子どもたちには十分な潜在能力があります。機会さえ与えれば科学技術の理解と修得はできるのに、それが発揮できないだけです。

今の子どもたちに必要なのは、ロジカルなものの考え方、科学技術の応用と工夫についての、実体験を通したトレーニングです。
SBDをとおして、物理現象(重力、摩擦、空気抵抗など)を感じ、モノづくりの楽しさに触れ、知と感性のトレーニングの場を提供したいと私たちは考えています。

資料:SBDはクルマの原点

日本代表を国際大会に参加させ、アメリカ人との付き合いが増える中で、彼らから、SBDの奥深さを学びました。細かなチューニング、正確な組付けや運転操作が重要であり、それらは全て物理現象に沿ったものだと分かりました。一見単純なSBDが、自動車大国アメリカで
80年も続いている理由のひとつだと思います。自動車のエンジニアとして勉強になった点を以下に挙げます。

(1) マン・マシン・インターフェースの原点を体感
SBDカーのステアリングシステムは、ハンドル本来の役割であるステアリング情報を
生(なま)に感じることができます。タイヤの入出力を途中で遮る構造がないので、路面やタイヤの状態がハンドルに直接伝わります。 
路面カント(勾配)による左右タイヤの荷重変化
左右のアラインメントの差による手応えの変化

(2) 速さを決める物理現象を体感
ころがり抵抗の変化
アラインメントと速度の関係
空気抵抗の変化(運転姿勢)
横風の影響(横風を利用して推進力に変える操作もある)

(3) 自動車工学と品質管理の概念
調整箇所は少ないですが、路面状況に対応したり、個々のドライバーが操作しやすいように調整をすれば必ず変化があり、組付け部品の調整管理がクルマの走行性能に影響を
及ぼすことを体感できます。
キングピンの締め付けトルク調整
ステアリングワイヤーの張り調整
各輪のキャンバー調整

[なぜSBDなのか]

クルマの原点であるSBDは以下の特徴を持っているため、自動車産業に大いに貢献できる可能性があります。

(1) SBDカーでクルマの原理構造を学べます。自分で組付け、調整し、運転することで、
物理現象を身体で理解すれば、その体験はこれ以上ない効果的な科学技術教育プログラムになります。
挙動変化が解りやすく、走る路面(コース)に対してドライバー(子ども)の運動能力と感性に合わせたチューニングが可能なため、次代の自動車産業を担うちびっ子エンジニアにとっても良い教材になるはずです。

(2) 構造が簡単で現象が分かりやすく、自動車操縦安定性の基本が学べる特徴を合わせ
持っています。教える側(大人のエンジニア)にとっても、面白いツールです。また、重力エネルギー(ポテンシャルエネルギー)を最大限に活かす発想は、エコカー開発に携わる現役エンジニアにとっても有益なヒントになるのではないでしょうか。


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Junichi Yamazaki,
2012/04/03 7:00
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Junichi Yamazaki,
2012/04/03 7:00